Japanese
English
特集 科学と芸術の接点
芸術を生み出す脳—サヴァン症候群をめぐって
Artistic production of brain with the savant syndrome
河村 満
1,2
,
花塚 優貴
3
,
緑川 晶
4
Kawamura Mitsuru
1,2
,
Hanazuka Yuki
3
,
Midoirkawa Akira
4
1奥沢病院
2昭和大学医学部脳神経内科
3中央大学人文科学研究所
4中央大学文学部人文社会学科
キーワード:
自閉性サヴァン
,
獲得性サヴァン
,
rTMS
,
tDCS
Keyword:
自閉性サヴァン
,
獲得性サヴァン
,
rTMS
,
tDCS
pp.531-535
発行日 2019年12月15日
Published Date 2019/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201094
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サヴァン症候群とは脳に深刻な障害を負いながらも,ある一定の領域にのみ卓越した才能を示す状態の総称である。その才能の領域は絵画や彫刻などの芸術表現をはじめ,音楽や計算,記憶など多岐にわたることが知られている。例えばOliver Sacksが報告したJohnとMichealという双子の兄弟は,4万年前や4万年先の任意の日付の曜日を言い当てる“カレンダー計算”の能力や床に落ちたマッチの本数を瞬時に言い当てる計数の能力,更には少なくとも8桁の素数を言える能力を持っていた。しかしその一方で彼らのIQは60程度であり,簡単な四則演算も難しかったという1)。卓越した能力を有する一方で単純な計算ができないということから,これらの機能が脳内の異なる領域で行われているものであると推し量ることができる。サヴァン症候群は脳機能を理解するうえでも魅力的な題材であるといえよう。
本稿ではサヴァン症候群を例に,ある機能が障害を受けて低下するとその分,他の機能が亢進・向上する場合があるとする,筆者らが提唱した「おしくらまんじゅう仮説」について述べることとする。特に言語機能と芸術表現において重要な視空間能力がそれぞれ両立困難な関係になっていることについて,①先天的にサヴァン的な能力を示す自閉性サヴァン,②事故や疾患により後天的にサヴァン的な能力を発揮する獲得性サヴァン,③磁気や電流を脳に与え,一時的に脳機能を抑制することでサヴァンに似た能力を示すようになった一過性サヴァン,そして④人以外の動物におけるサヴァン様能力の研究例を紹介し,「おしくらまんじゅう仮説」について論じてみたい。
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