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はじめに
近年,ロボット工学が進歩し,医療・介護分野の現場でも,さまざまなロボット機器の導入が始まっている.『脳卒中治療ガイドライン2015』1)では,早期の日常生活動作(activities of daily living;ADL)の向上と社会復帰を図るためには発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められており,特に早期から歩行獲得を目的とした歩行練習の実施が必要となる.しかし,重症例においては歩行介助量が大きいため歩行練習の実施が難しく,可能であっても練習量を確保することには大きな困難さを伴う.このような歩行練習における安全性・再現性・労作耐久性の問題の克服には,ロボットの導入が望ましいと思われる.ロボットを用いたリハビリテーションはsystematic reviewにおいて,発症3か月以内の歩行不能例で,自立歩行の獲得という恩恵が得られると報告されており2),ガイドラインでも推奨されている(グレードB).
2007年よりトヨタ自動車株式会社と藤田保健衛生大学が共同で開発した歩行練習アシスト(Gait Exercise Assist Robot;GEAR)が,2014年より国内約20施設において運用開始されており,岡山リハビリテーション病院(以下,当院)でも8月より導入している.GEARは長下肢ロボット,低床型トレッドミル,安全懸架装置,ロボット免荷装置,患者用モニタ,操作パネルから構成される3).ロボット足底部の圧力センサと膝関節角度から歩行周期を判断し,適切なタイミングで膝関節の屈曲・伸展のアシストを行う4).さらにアシスト量の調整や視覚・聴覚的フィードバックなどの多彩な機能が搭載されている3-5).予備的研究では通常練習群と比較して,GEAR練習群では歩行改善効率が高いことが報告されている5).GEARは,Lokomat®やGait Trainerと比較すると多彩な機能をもち,冗長性が高いため,患者の個別性にあわせた調整や課題の設定が重要となる.単に“ロボットを使う”だけで効果が得られるのかは定かではないため,“ロボットを使いこなす”という実践的観点が重要となる.
現在までに当院にて14例にGEARを施行した結果,上述の予備研究と同様に,重症例において恩恵が得られる傾向にある.今回,予後予測では歩行獲得困難と思われた症例に,GEARによる歩行練習を実施し,短期間で歩行獲得に至るという良好な結果を得たので,介入経過を含めて報告する.
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