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はじめに—脳卒中患者の全身持久力評価の重要性
脳卒中の治療管理,リハビリテーションを考えたとき,その究極の目的は,体力のなかでも総合力を表すとされる全身持久力の低下を最小限にとどめることといっても過言ではないだろう.
全身持久力は,脳卒中発症後さまざまな要因で低下しやすい1).発症直後は,意識障害や安静臥床の必要性から絶食(輸液のみ)とされて経口・経腸の栄養が休止し,一定期間,本来必要な栄養素,栄養量が確保できない状態を余儀なくされる.急性期は,自力での動作ができないことから身体,精神両面で活動ができない時間が長く,気道感染,尿路感染,消化器症状などを合併すると消耗が早まる.回復期では,多めのリハビリテーションが行われるがなお介助で行われることも多く,移動は安全を考えて車椅子だったり,必要時だけの監視介助の歩行だったりして,自分の力を十分に使えない状態が続く.退院後の生活期では,活動や参加の場が縮小し,制限制約された状況にとどまりやすい.
リハビリテーション医療では,急性期には経口・経腸栄養のない期間を極力短くして筋量の減少を避け,早期からの適切なリハビリテーションにより廃用性の合併症を予防する.回復期では,早期に日常生活動作(activities of daily living;ADL)の獲得をめざして機能回復を促進し動作練習を行い活動性を確保する.生活期には介護保険領域とも連携し,活動目的を設定し,参加の場を確保する.これらはすべて全身持久力に影響する身体資源が減少しないよう考慮したものである.しかしながら現実としては,退院しても発症前に比べて疲れやすく,歩行スピードも遅く,歩行や活動の時間も短く,社会生活は制限され出かけていける場所も限られるというように,全身持久力が低下していることがうかがわれる.
一般に脳卒中患者は全身持久力が低下しているという報告がほとんどである.それは全身持久力というものをいろいろな方法で評価されてわかった結果である.一方でそれはトレーニングによって改善するともいわれており1),目標とすべき数値として示すものでもある.漠然としてではなく,数値として全身持久力を知ること,それが片麻痺患者の全身持久力を考える第一歩となることから,本稿では脳卒中患者の全身持久力の評価について概説する.
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