Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
上林暁の『病閑録』—脳卒中患者の慰め
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.1166
発行日 2017年11月10日
Published Date 2017/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201156
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昭和27年の正月早々,50歳で「軽微な脳溢血」に倒れた上林暁は,同年4月に発表した『病閑録』(『上林曉全集第15巻』,筑摩書房)の中で病後の心境を語っている.
自宅療養中の彼が新聞の死亡欄を見て驚いたのは,脳溢血で亡くなる人の多さである.上林が注意して見るようになってからだけでも,日本画家の吉村忠夫,彫刻家の本山白雲,美術評論家の一氏義良,代議士の木村小左衛門,作家の久米正雄,法学者の加藤正治など,多くの人が脳溢血で死んでいた.もっとも,「それを見ても,別に恐怖は感じない」という上林は,「むしろ自分と同じ病気で倒れてゆく人を見ると,身近かな親しみを感じる」と語る.
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