Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「パワーレンジャー」,「ハクソー・リッジ」—マイノリティを世の光とする思想の結晶
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1167
発行日 2017年11月10日
Published Date 2017/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201157
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2017年の学習指導要領改訂は,2014年の文部科学大臣による中央教育審議会への諮問によって開始された.諮問文では,「成熟社会を迎えたわが国が,個人と社会の豊かさを追求していくためには,一人一人の多様性を原動力とし,新たな価値生み出していくことが必要」との認識を示している.<分断と排除>の政治思想と真っ向から対立する教育思想として措定できるものであり,その具現化とは,マイノリティを尊重し,その力を活かすことである.過去,これを形象化してきたのが映画であり,それは現在も続いている.以下,マイノリティ讃歌ムービー2作.
「パワーレンジャー」(監督/ディーン・イズラライト:2017)は,東映のスーパー戦隊シリーズのアメリカ版である.構成メンバーは5人の高校生.ブルーレンジャーのビリーは自閉症スペクトラム.記憶力や機械の扱いに優れているが,冗談や皮肉がわからず,いじめのターゲットになっている.ビリーをいじめから救ったのが,かつて高校アメフトの伝説的スター選手だったレッドレンジャーのジェイソン.雲の上から地底に落ちたような挫折者だ.さらに,仲良しグループから排除されたピンクレンジャーのキンバリー.母親を看病し,不登校を続けるブラックレンジャーのザック.イエローレンジャーのベッキーに至っては,単独行動を好むLGBT.各自がなんらかの不全感やマイノリティ性を抱えている.リーダーはジェイソンだが,ドラマのターニングポイントで力を発揮するのはビリー.チームに自閉症スペクトラム者がいることの利点を描いているという点で出色.
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