連載 認知症の臨床評価尺度
観察による認知機能の評価尺度
角 徳文
1
Norifumi Tsuno
1
1香川大学医学部精神神経医学講座
キーワード:
認知症
,
認知機能障害
,
評価尺度
Keyword:
認知症
,
認知機能障害
,
評価尺度
pp.756-757
発行日 2017年7月10日
Published Date 2017/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201033
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認知症の中核症状である認知機能障害の評価を行う際に,被験者が視力障害や難聴などの感覚器機能の障害を有する場合,あるいは麻痺や失調などの運動機能障害を有する場合には検査施行が困難となり,その評価は一部分に限られてしまう.このような際に,普段の日常生活や最近の出来事について家族からの情報があれば,観察式の評価尺度を用いることができる.
観察式評価尺度は,対象者の知的機能の段階を日常生活におけるその人の言動や行動,作業遂行能力などの観察を通じて評価するものである.対象者本人の協力が得られない場合や質問式が実施できない場合でも判定が可能である.しかし,観察式尺度を用いて正しい判定を行うためには,対象者の日常生活状況を正しく把握する必要がある.そのためには対象者の家族や介護者たちから,いかに正しい情報を引き出すかが重要になる.家族の与えてくれる情報が常に正しいとは限らない.例えば,たまにしか会わない親族や被害妄想の対象となり患者に対して感情的になっている介護者から得られる情報は信頼性に欠ける場合があるだろう.どの人が情報提供者として適切なのかを見極める必要がある.日課,行動範囲,対人関係,趣味や関心事など,対象者の日常生活全般にわたって,情報提供者に具体的に聞いていく作業が必要となる.また,家族は患者の前では真実を語るのを躊躇する場合があり,別々に問診するなどの配慮も求められる.このような状況因を踏まえつつ適切な評価をするために,面接や問診の技術に習熟しておく必要もある.
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