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従来,認知症の認知機能障害(記憶障害,見当識障害,失語,失行,失認,実行機能・遂行機能の障害など)を中核症状といい,認知症に伴って発現する不安・焦燥,抑うつ気分,妄想,不穏,徘徊などの精神症状・行動障害を周辺症状と呼んでいた.しかし,周辺症状の1つ1つを中核症状と明確に区別して評価することは困難な場合も多い.例えば,認知症患者が示す幻視を精神症状ととるのか,記憶,知覚,判断力,見当識などの認知機能障害が複合した症状であるのかを判別するのは,簡単な例ばかりではない.これまでにも多くの尺度が開発・使用されてきたが,症状の評価方法が一定でなく用語も統一されたものが少なかった.
1996年の国際老年精神医学会により従来の周辺症状にあたる症候に対して,認知症の行動および心理行動(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)という用語が用いられるように合意がなされた.これ以降,概念や用語も整理されるようになり,国際間においても相互比較検討が可能となっていった.その前後の時期には,現在も用いられることの多い信頼性が検討された新しい評価尺度がいくつか開発された.それらの代表的尺度が,精神症状や問題行動の頻度と程度を介護者から聴取するNeuropsychiatric Inventory(NPI),Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease(BEHAVE-AD)や,agitation(焦燥や激越)の有無や程度を具体的な行動から評価するCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)などである.
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