増大号特集 精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める—エキスパートによる実践的活用法
Ⅱ章 疾患別の評価尺度・検査
神経認知障害群
外傷性脳損傷による認知症の評価尺度—RBMT,EMC,BADS,FrSBe
髙橋 賢人
1
,
上田 敬太
1,2
1京都大学精神医学教室
2京都光華女子大学健康科学部医療福祉学科
キーワード:
外傷性脳損傷による認知症
,
neurocognitive disorder due to traumatic brain injury
,
評価尺度
,
clinical rating scale
,
リバーミード行動記憶検査
,
Rivermead Behavioral Memory Test
,
RBMT
,
EMC
,
Everyday Memory Checklist
,
BADS
,
Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome
,
FrSBe
,
Frontal Systems Behavior Scale
Keyword:
外傷性脳損傷による認知症
,
neurocognitive disorder due to traumatic brain injury
,
評価尺度
,
clinical rating scale
,
リバーミード行動記憶検査
,
Rivermead Behavioral Memory Test
,
RBMT
,
EMC
,
Everyday Memory Checklist
,
BADS
,
Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome
,
FrSBe
,
Frontal Systems Behavior Scale
pp.657-661
発行日 2024年5月15日
Published Date 2024/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207284
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外傷性脳損傷による認知症
dementia(認知症)という言葉は,DSM-Ⅳまでは,記憶の障害に加え何らかの高次脳機能の障害が存在する,すなわち合わせて2つ以上の能力低下が存在する病態を意味した。しかし,DSM-51)からは,記憶に対する特別な扱いがなくなり,何らかの高次脳機能が1つでも低下している場合,neurocognitive disorder(神経認知障害)と呼ぶこととなり,dementiaという言葉は捨て去られた。しかし,日本語訳では認知症という言葉が残され,認知症(DSM-5)というわかりづらい用語で表現されている。DSM-5でいう外傷性認知症とは,①認知機能障害があり,日常生活や社会生活に制約がある,②脳の器質的病変の原因となる外傷の証拠がある,③他疾患(先天性疾患,変性疾患など)が除外されている,という条件を満たすものとされ,これは『高次脳機能障害診断基準ガイドライン』2)における,診断基準と合致するものとなっている。
外傷性脳損傷の特徴として,損傷部位や病態の多様性が挙げられる。これは,受傷機転や受傷部位が患者ごとに異なることに起因する。とはいえ,大まかな分類としては,直接外力により外力直下または反対側の脳組織が傷害される局所脳損傷,および脳の回転や機械的伸長により脳の広範な白質線維が剪断されるびまん性軸索損傷(diffuse axonal injury:DAI)の2つがある。交通外傷ではDAIが多い一方,転倒・転落といった非交通外傷では局所脳損傷が多く,交通外傷では両者の合併が45%を占める3)。
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