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「こんにちは.お疲れ様です!」院内ですれ違うたびに元気に挨拶してくれるのは,昨年の春から障害者雇用となったWork Support Project(WSP)チームの一員である.揃いのブルーのポロシャツを着て,少しぎこちないながらも懸命に仕事に取り組んでいる姿は溌剌としている.そして,リハビリ室の受付でも,ブルーのシャツを着たスタッフが訪れる子供たちを笑顔で迎えている.子供たちや訪問者の名前を確認し,担当スタッフを呼び出すまでの取次ぎをしてくれるおかげで,セラピストたちは診療に十分専念できるようになった.WSPの「Support」には,障害者の就労を支援するという意味だけでなく,専門職が業務へ注力できるよう,彼らの働きによって支えられることを意味する.昨年発足したばかりのWSPであるが,これまでの障害者雇用に加え知的障害や高次脳機能障害を含むさまざまな障害特性に対応できる雇用環境づくりが進められている.
従来,公的機関では「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づいた法定雇用率を満たすことが義務化されているが,対象となる身体,知的,精神障害者のうち,知的障害者の雇用が進まない傾向にある.特に医療・福祉機関における障害種別雇用状況(2014年度)では,身体障害者の半数程度と報告されている.その要因として,認知機能や社会性に問題を抱えた障害者に適した職域の開発,職務遂行に必要な支援が不足し,機関全体でなく一部署にとどまった支援であることなどが指摘されている.これらの問題を背景に,当センターではリハビリ科医師,ソーシャルワーカー,看護師,人事課職員ら多職種でWSPチームを作り,地域の障害者就労支援センターとの連携のもと,就労希望者の実習,面接,雇用環境整備,ジョブコーチの育成および院内スタッフへの啓蒙を進めている.医療機関における仕事は専門性の高いものが多く,知的障害や高次脳機能障害者に分かりやすく整備するのが難しい反面,医療専門職が多いため施設全体の理解を得られやすいというメリットがある.さらに,多職種のかかわりが各職種,各部署との職務調整,風通しの向上に役立っている.WSPで請け負っている主な仕事は,事務作業(郵便集荷・配達,シュレッダー処理,名刺作成など),清掃作業,看護業務補助(テープカット,シーツ折りなど)があり,個々の能力に合わせて業務を組み立てている.また,リハビリ室内では,清掃業務以外にこれまでセラピストが兼務していた受付業務をお願いしている.記憶障害のため手順や場所などを覚えるのが困難なスタッフであったが,作業療法士と一緒に業務日誌や業務チャートなど,視覚的な手掛かりによる作業環境を整備した結果,できる仕事が徐々に増えていき,現在は,最小限の支援で週5日間休まず出勤している.
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