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はじめに
“もし可能であるならば障害を有する誰もが一般企業に就職するのが理想であり,これが雇用サービスの第一目標である.事実,職業に就いている重度障害者の約半数は一般企業で働けることが過去の経験からも明らかである.受け入れ対策を講じる理解ある企業経営者も少なくなく,多額の費用を惜しむことなくエレベーターをとりつけ,スロープ工事をし,建物の構造を変更し,また労働時間をずらしたり,在宅労働の便宜をはかったりする.このような措置が講じられれば,重度障害者の労働能力も遜色がなくなり,非障害者から隔離されることなく,同じ環境のもとで働き,通常の賃金を得ることが可能となる”.
“多くの雇用主が,障害者雇用の理想をめざして,努力していることに感謝すると共にできるだけ多くの障害者が,そのような社会に恵まれることを願うのであるが,特別措置がとられても,一般企業への就職が無理とおもわれる重度障害者もおり,そのような場合,シェルターワークショップや,企業出向といった保護雇用を,一時的もしくは永続的に行なうことが,現時点で最良の方策とおもわれる1)”(ゴチック筆者).
これは英国雇用省の雇用白書の冒頭の部分の引用であるが,まさしく障害者雇用と保護雇用の基本的な考え方といってよかろう.
同じ白書の保護雇用史の項で,すでに1941年にワークショップを福祉依存でなく,産業指向にすることの必要性を強調しており,同時に治療や福祉との密接な結びつきの重要性を指摘することも忘れていない.
わが国でワークショップと称されるものは授産施設である.小さな共同作業所等を含めて福祉的就労といい,いまだに福祉依存の状況にあって,そこで働く障害者は自立のめどさえたっていない.
一方,一般企業への障害者雇用も,身体障害者雇用促進法の改正後2年を経た今日,雇用率の向上はみられない.
原料輪入・加工輸出繁栄指向の,はげしい国際競争を意識する企業は,結果として招来している円高等の不況のもとで減量経営,少数精鋭方針など障害者雇用どころではないといった風潮すらあって,積極的な雇用への対応をしようとしていない.
経済先進国といわれるわが国の,このような障害者雇用(処遇)の後進性を,すくなくともヨーロッパ諸国並の水準に近づけていくためには,日本の経済構造そのものを見直さなければどうにもならないかもしれないが,ともあれ政府の福祉社会の建設という掛声を.そのままに終らせてはならないという思いをこめて,障害者雇用の拡充と保護雇用制度の実現のために,研究会などを設けて勉強しているところであり,日頃考えていることを中心に述べてみたい.
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