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はじめに
障害者の雇用を進めるための対策として,雇用納付金をともなう障害者雇用率の設定や事業主に対する多様な雇用助成措置など,いままでにない積極的な施策を盛り込んだ身体障害者雇用促進法の抜本的改正(昭和51年)が行われたことは,わが国の職業リハビリテーションの分野から総合的なリハビリテーションの分野にまでも直接あるいは間接に影響を及ぼしているように見える.
従来,障害者の雇用にはあまり積極的でないといわれていた大企業において,事業主および従業員の間に,障害者の雇用に対する新たな認識が生れつつあることが感じられるのはその一例である.企業内に障害者雇用対策室あるいは委員会を設けた企業も少なくないと聞いている.また障害者雇用を担当する人びとの熱心な調査研究は,専門家のそれをしのぐものがあるともいわれる.あまりに楽観的,ムード的とらえ方かもしれないが,とにかく“風が変った”という感想を抱く関係者は少なくない.
そうした雇用の現場における現象に対して障害者の雇用にいたるまでの職業リハビリテーションの分野においては,どのような影響が見られるであろうか.見方によればわが国では職業リハビリテーション体系といえるものはいまだ十分に確立されていないともいえる.また,職業リハビリテーションというもの,およびその対象者の範囲についても,じゅうぶんな論議がなされていないという事情も考慮しなければならないであろう.
一方,現状では一般雇用はもとより,身体障害者授産施設あるいは精神薄弱者授産施設などでも働くことが困難とみられる重度の障害者の職業問題も大きな課題となっている.
本稿においては,新たな雇用対策という強力なインパクトが与えられたこの機会に,リハビリテーションのゴールといわれる雇用を基点として,わが国の職業リハビリテーションを見直し,サービス体系整備への足掛りが得られれば幸いである.
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