The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 15, Issue 2
(February 1981)
Japanese
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Ⅰ.はじめに
ここでいう重度障害者とは,職業的に重度という意味であることはお断りするまでもないと思うが,我が国ではどうもこの点がややこしい.“重度障害者と保護雇用”という表題は,編集部から指定されたものであるからそのまま使うことにしたが,この重度ということに限ってみても,なかなか流動的である.本来人間の持っている職業能力などというものは,個人のパーソナリティを軸にして,環境や産業,科学技術,文化などの状況によって大きく変化するものである.
たとえば,全盲は重度である.下肢機能全廃も重度である.この両方が重複していても重度といわれる.しかし,全盲と下肢機能が全廃している障害者でも,条件設定をすることによって非障害者と遜色のない仕事をしているケースもある.精神薄弱者の場合でも,重度といわれる障害者がよく仕事に適応している例が少なくない.
かつては職業的にも重度とみられた障害者が,現在では立派な職業人として仕事をするように変化がみられており,職業的重度という言葉の内容も相対的で,かつ流動的な側面のあることを念頭に置いてみておく必要がある.
我々が,保護雇用という特別の雇用制度を考えるとき,その対象は現状では一般雇用に結びつきがたい障害者(身体障害,知的・精神的障害など)が念頭にあるわけであるが,この保護雇用制度をつくることによって,企業での雇用努力が消極的になることを上記の意味からも警戒しておかなければならない.産業の発達に伴う科学技術の進歩は,広い分野から障害者雇用に生かされなければならないし,それは全産業がとりくむことによって可能になるからである.
以上のようなことを念頭におきながら,筆者の所属している社団法人ゼンコロが提言としてまとめた保護雇用制度について,その要約を紹介することにしたい.
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