Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「愛の渦」―コミュニケーションに困難を抱える若者たちの性へのアクセスを描く
二通 諭
1
1札幌学院大学文学部人間科学科
pp.587
発行日 2014年6月10日
Published Date 2014/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110540
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一夜の乱交パーティを描いた「愛の渦」(原作・脚本・監督/三浦大輔)は,「着衣時間全編中たった18分半」と謳っているものの,性的欲情の喚起を目的とするポルノエンターティメントの類ではない.本作は,もともと第50回岸田國士戯曲賞受賞(2006年)の舞台作品であり,演出を手がけた三浦がそのまま監督としてメガホンを取っている.質の高さは折紙つきである.本作を一言で形容するなら,「人間科学映画」である.人間の多様な側面が活写されているからだ.
乱交パーティと言っても,0時から5時まで,男2万円,女1千円,カップル5千円という性風俗産業の一商品に過ぎないが,見方を変えれば体験的性教育を展開する学校である.開始前に,性行為の前とトイレの後には必ずシャワーを浴びる,コンドームを必ず装着する,女性の意思を尊重する,という三つのルールが提示される.コンドームの使い方についての教示もある.終了時には,ストーカー予防のためとして男女時間差退室および連絡先の交換を禁じる指示が出る.このような悪所にも管理が徹底されるところに現代日本の感性の到達がある.
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