呼と循ゼミナール
色々な模索(その3)—流れと渦と底音
沖野 遥
1
1東海大学医部生理学教室
pp.302
発行日 1979年3月15日
Published Date 1979/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203339
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血液が房から動脈へでるには2度弁を通るが,ここで弁としては開くなら最大口径まで閉じるなら密閉するのが本来の姿である。しかし最近はいつ弁が開き閉じるのか簡単にいえなくなってきた。こうなると心周期の各時相を弁の開閉時を基準として分析してきた立場がぐらつかざるをえない。これは超音波心臓断層による心内各部の動きや,パルスドドプラー法による心内局所での血流所見などをあわせてPCGと時相対比するとこれまで概念的に分類してきた心周期時相の定義と一致しないことが判ってきたからである。古来聴診した心音から弁の開閉を知って色々な判断の根拠としてきたが,開弁と閉弁による心音発生の機構はまだよく判っていなかったのも事実である。
内圧上昇によって動脈弁は押し開かれて,ジェット流的血流が開始するので,この吹き込みによる乱流で弁や心臓血管壁が振動されて可聴音となると考えると開弁に一致して心音が聞えるのだと説明できよう。しかし最近の実測結果では開弁およびこれに引続く急速な血液の加速拍出時相の間は動脈内拍出血流は層流で弁などをふるわせる乱流は記録されないが開弁音は聞える。
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