Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
倉田百三の『俊寛』―運命の受容を拒否する人間
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.368
発行日 2014年4月10日
Published Date 2014/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110474
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大正9年に発表された倉田百三の『俊寛』(『倉田百三選集5』春秋社)には,鬼界ケ島に一人取り残された俊寛の自らの運命を受容せざる姿が描かれている.
倉田百三が描く俊寛はもともと,「わしは呪われた人間だ.わしの魂の中には荒らす要素がある.わしの行く処はきっと平和が無くなる.わしは小さい時からそのために皆に嫌われて来たのだ」と語るような,「人と和らぐことの出来ない」人間だった.そのため俊寛は,成経や康頼とともに鬼界ケ島に流された時も一人だけ孤立し,成経から「あなたと毎日一緒に暮らさなければならないことはわしの重荷になりだした.あなたは私たちに不幸と絶望との息を吐きかける」と嫌悪されるような男だったのである.
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