Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『運命』と『新世界より』—障害受容過程を表現した兄弟曲
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.430
発行日 2024年4月10日
Published Date 2024/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203097
- 有料閲覧
- 文献概要
筆者は以前本欄(総合リハ31:490,2003)で,ベートーヴェンが1808年,38歳の時に発表した交響曲第5番『運命』には,ベートーヴェンが自らの聴覚障害を受容していく過程が表現されているという主張をしたことがある.
すなわち,第1楽章は聴覚障害が不治のものであることを悟って一時は自殺まで考えたほどの衝撃,第2楽章は一転,しばらく時間が経って精神的な安定を取り戻した状態,第3楽章は第2楽章の寝椅子に横たわっているような状態から起き上がって少しずつ前に歩み始めた状態,そして第4楽章は一時は自死を考えるほど心理的に追い詰められたが,それを克服して交響曲第3番『英雄』という交響曲史上に残る傑作を完成させることができたという爆発するような喜びである.
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.