Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
シェイクスピアの『マクベス』―運命論からの脱却
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.1180
発行日 2009年12月10日
Published Date 2009/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101668
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1606年に初演の『マクベス』(大山俊一訳,旺文社文庫)には,魔女や幻影の予言めいた言葉に促されるような形でダンカン王を殺してマクダフ軍と闘うマクベスの姿が描かれている.マクベスは,魔女たちの予言を信じて自らの行動を決める一種の運命論者なのだが,同じ運命論者たる『テーベス攻めの七将』(アイスキュロス)のエテオクレスが,自ら運命の只中に飛び込むようにして破滅へ向かうのに対して,マクベスは最後には運命に反抗するかのような行動に出ているのである.
王殺しという大罪を犯して国王になったマクベスに,幻影が「女から産まれた者は誰一人,マクベスを傷うことはあり得ない」,「マクベスが滅びることはあり得ない,大いなるバーナムの森が,いと高きダンシネインの丘へ,マクベスめがけて動くまで」と囁きかける.これを聞いたマクベスは,「すばらしい予言だ」と喜んだ.女から産まれない者とか,森が動くなどということは,考えられないからである.
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