1さつの本
倉田 百三 著—生への姿勢を教えられた"出家とその弟子"
渡部 恭子
1
1北海道遠軽保健所
pp.847
発行日 1973年11月10日
Published Date 1973/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205394
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高校時代に愛読し感動した本に,倉田百三著の"出家とその弟子"がある。これは大正5年に書かれた戯曲で,6幕からなっている。青春期の多感な時代に考える愛と恋の相違,生への疑問,死への関心,人間の運命について,教示がなされた忘れることのできない書物である。
第1幕はある冬の出来事である。殿様に見捨てられた浪人と,その妻,息子1人の屋敷に,お上の勘気で流罪になった親鸞聖人が2人の弟子を連れて旅の途中,一夜の宿をお願いする。主人は根はやさしい性格であるが,浪人になってから人を信じられなくなり,世のなかを呪い,生きるために自から悪人になろうとして,その願いを断わり,追い出してしまう。彼らは雪のなか石を枕に野宿する。真夜中主人は悪夢にうなされ,宵の態度を後悔する。そして追い出した聖人を捜し,屋敷の中に招き入れ,謝罪する。その後,主人は帰依する。
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