Japanese
English
症例報告
外傷性健忘症候群の1症例に対する備忘録獲得に向けての訓練
Training Use of Compensatory Memorandum in a Case of Traumatic Amnesia.
平林 一
1
,
稲木 康一郎
1
,
平林 順子
2
,
中村 淳
2
,
金井 敏男
3
,
片井 聡
4
,
伊沢 真
4
,
市川 英彦
5
Hajime Hirabayashi
1
,
Koichiro Inaki
1
,
Junko Hirabayashi
2
,
Jun Nakamura
2
,
Toshio Kanai
3
,
Akira Katai
4
,
Makoto Izawa
4
,
Hidehiko Ichikawa
5
1リハビリテーションセンター鹿教湯病院臨床心理科
2リハビリテーションセンター鹿教湯病院言語療法科
3リハビリテーションセンター鹿教湯病院理学療法科
4リハビリテーションセンター鹿教湯病院神経内科
5リハビリテーションセンター鹿教湯病院内科
1Department of Clinical Psychology, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
2Department of Speech Therapy, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
3Department of Physical Therapy, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
4Department of Neurology, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
5Department of Internal Medicine, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
キーワード:
外傷性健忘症候群
,
注意障害
,
備忘録
,
認知リハビリテーション
Keyword:
外傷性健忘症候群
,
注意障害
,
備忘録
,
認知リハビリテーション
pp.71-76
発行日 2001年1月10日
Published Date 2001/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109403
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
記憶障害に対しては,これまでにもさまざまなリハビリテーションアプローチが試みられているが,大別すると,①記憶課題の反復練習を通じて,損なわれた記憶そのものを強化しようとする訓練(直接刺激法)1),②患者の残存している能力を利用して,新たな記憶方略を獲得させる訓練(内的補助法)1-3),③記憶障害を補償する道具の使用や環境の調整(外的補助法)1-3)のいずれかに区分できる1,2).ただし,①の直接刺激法については,有効性自体をむしろ疑問視しているレビューが多い1).また,②の内的補助法は,一定の効果をおさめてはいるが,それを適用できる範囲と患者が限られてしまう難点がある1).したがって,実際的見地からは,③の外的補助法,特に備忘録1,4-6)の活用が奨励されることが多い.
われわれの経験では,記憶の障害のみを呈する純粋健忘症候群の症例では,備忘録を日常生活に定着させることは,さほど困難とは思われなかったが7),コルサコフ症候群や頭部外傷後の健忘症状のように,記憶の障害に注意や遂行機能の障害,意欲低下などが随伴している場合には,それらの影響で,備忘録が十分身に付かないままに終わってしまうことが少なくない.したがって,このような症例に対しては,備忘録の獲得と定着に向けて,なんらかの治療的介入が必要になる.
本稿では,備忘録が日常生活上で定着した外傷性健忘症候群の1例を呈示し,そこに至るまでの訓練経過を報告する.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.