Japanese
English
症例報告
“Sub-clinical Aphasia”と考えられた1症例
“Sub-clinical”Aphasia: A Case Report.
平林 一
1
,
平林 順子
2
,
稲木 康一郎
1
Hajime Hirabayashi
1
,
Junko Hirabayashi
2
,
Kouichirou Inaki
1
1リハビリテーションセンター鹿教湯病院臨床心理科
2リハビリテーションセンター鹿教湯病院言語療法科
1Department of Clinical Psychology, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
2Department of Speech Therapy, Kakeyu Hospital Rehabilitation Center
キーワード:
失語症
,
痕跡
,
Sub-clinical
Keyword:
失語症
,
痕跡
,
Sub-clinical
pp.142-146
発行日 1995年2月10日
Published Date 1995/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107797
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
現在の失語症学では,失語に特徴的な言語症状を呈し,標準的な検査でも異常が検出できる程度の症例を失語症と診断するのが一般的であり,同症状に関する膨大な知識も,このような明白な臨床所見を有する患者を研究対象として蓄積されてきたものといえる.しかし,日常の臨床に目を移すと,決してこのような明らかな失語症ばかりではなく,失語の言語症状は判然としないものの,言語機能に相対的な低下がみられ,いわゆる「痕跡」あるいは「sub-clinical」な失語症とみなしうるのが最も適当と思われる症例に遭遇することがある.過去の研究において,このような痕跡程度の失語症は不問の領域であり,おそらく臨床の現場においても,失語症というよりは,単に軽い知的機能障害として不当に評価されていた可能性も考えられる.
今回われわれは,明白な失語の陽性症状を欠き,失語症検査の成績も正常範囲内にあるために,当初は精神機能の低下が疑われていたが,一般的な神経心理学的検査の成績から非常に軽い失語症として解釈するのが妥当と思われる症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.