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はじめに
地域あるいは病院,施設などに在住する高齢者における転倒の年間発生頻度は,地域高齢者では約10~20%1-5),病院や施設入所者においては約15~37%と報告されている6-11).いずれにしても10~40%近くの高齢者は1年間に転倒を経験している.また,高齢女性に多い骨粗鬆症患者は特に転倒による骨折を引き起こしやすく,骨折の中でも大腿骨骨折は重篤な合併症である.大腿骨頸部内側骨折により入院した患者の縦断的歩行機能調査では,骨折前に歩行可能であった高齢者の193例中37例(19%)が骨折後に歩行不能となり,長期臥床を強いた結果により生じた体力の低下が不可逆的なものであるということを示している12).したがって,このような重篤な疾病と直接結びつき,ADL低下を来す転倒の予防は急務の課題であるといえる.
転倒の機能的原因としてバランス機能の障害は主要因であり,高齢者の10~25%はバランスや歩行機能の低下により転倒を引き起こしている13).したがって,転倒者のスクリーニングにはバランス機能の評価が重要であるといえる.従来から用いられてきたバランス機能評価は重心動揺測定や片脚立ち保持検査14)などの静的バランス検査が中心であったが,近年では欧米を中心として臨床的に使用可能な外乱負荷応答や運動中のバランス保持機能を評価する指標が提唱され,転倒者の機能評価のために用いられている15-19).より効果的なリハビリテーションを遂行するためには,高齢者の転倒と姿勢調節機構との関連性を明らかにして,転倒者においてどのようなバランス機能が低下し,どのような検査法が高齢者の転倒をもっとも反映しているのか明らかにする必要がある.
そこで本研究では,姿勢調節の3大機能要素である,静的姿勢保持,外乱負荷応答,随意運動の各項目にわたる検査を実施して,高齢者の機能不全を総合的に捉えるとともに,転倒とその予防にかかわる生体機構の症候障害学的な基礎資料の獲得を目的とした.
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