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はじめに
高齢者における転倒の危険因子として,身体機能の低下や環境要因が明らかにされている1).また,高齢者に対する治療的運動を用いた転倒予防の効果が次第に明らかとなり2-7),運動介入の重要性が認識されるようになってきた.転倒頻度を減少させるためには,その原因となる要因を同定し,問題に応じた介入を行っていく必要がある5,8).これらの知見は,地域に在住する,比較的健常な高齢者に対して行われた介入研究にもとづいており,虚弱高齢者に対する有効な運動介入の方法は明らかとなっていない9-12).ここで言う虚弱高齢者とは,地域に在住する比較的健常な高齢者との対比として,疾病,障害,活動制限を有する者のことであり,病院や施設を利用する高齢者を意味している.
地域在住高齢者と,施設を利用する高齢者について転倒の原因を比較すると,施設入所者では歩行・バランス障害,筋力低下,めまいによる転倒が約50%であるのに対し,地域在住高齢者では偶発的・環境要因を原因とする転倒が41%を占めている13).このように,施設を利用する高齢者は,身体的障害により転倒を起こし,地域在住高齢者では偶発的に転倒を起こす者が多く,転倒の発生機序や原因が大きく異なっている.また,これらの対象間では活動範囲が著しく異なるため,転倒研究を行う場合には地域在住高齢者と,障害を有する施設利用高齢者とを区別して検討する必要がある.
地域在住高齢者と比較し,施設を利用している高齢者は転倒頻度が高く,骨折やその後の死亡率も高いことから,転倒予防に対する緊急な対応が必要とされている13).そのなかでも特に注意を要する者は,加齢や廃川により身体機能が悪化し,年々,転倒頻度が増加してくる者であろう.しかし,転倒頻度の増加と機能状態の変化との関係については十分に明らかにされておらず,それらの対象に効果的な運動介入を行うための基礎資料は不足している.
そこで本研究では,障害を有して通所リハビリテーションを利用する高齢者を対象として,転倒状況と機能状態との関連性についての縦断的な検証から,転倒頻度が増加する者の身体機能およびその変化の特徴を明らかにして,効果的な介入方法を提唱することを目的とした.
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