Japanese
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報告
環境の差異による姿勢動揺の変化―地域在住高齢者における検討,および転倒との関係
Emotion related to center of gravity in frail elderly people.
山田 実
1,2,3
,
上原 稔章
1
Yamada Minoru
1,2,3
1坂田整形外科リハビリテーション
2神戸大学大学院医学系研究科
3京都大学大学院医学系研究科人間健康学専攻
キーワード:
情動
,
高齢者
,
姿勢動揺
,
転倒
Keyword:
情動
,
高齢者
,
姿勢動揺
,
転倒
pp.885-891
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101279
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要旨:本研究では,環境の差異によって姿勢動揺が変化するのか,さらに,この姿勢動揺の変化が転倒とどのような関係にあるのかを検討した.対象は要支援から要介護2までの虚弱高齢者40名であった.加速度計を用いて,支持物のない立位と平行棒内(ただし触れない)との2条件で姿勢動揺を測定した.各条件とも30秒間の計測を行い,得られた加速度信号よりRMSを求め,姿勢動揺の指標とした.平行棒内のRMSから支持物なしのRMSへの変化量(ΔRMS)を求めた.また,それぞれの条件において情動面でどのように感じたのかを,内省報告として聞き取りを行った.測定日より前向きに6か月間の転倒調査を行い,転倒群と非転倒群に分類した.
測定の結果,支持物なしでは,平行棒内と比較して,有意にRMSが大きくなっていた(p<0.05).内省報告として,支持物なしでは「怖い」,「不安」などネガティブな報告が目立ったのに対し,平行棒内では「安心」,「落ち着く」などポジティブな報告が目立った.転倒群では非転倒群と比較して,支持物なしで有意にRMSが増大していたが,平行棒内では差を認めなかった.ΔRMSは転倒群で有意に大きくなっていた(p<0.05).転倒を予測した判別分析の結果,ΔRMSが1.133%でカットオフ値となり,正答率は72.5%であった.なお,ROC曲線の曲線下面積は0.801であった.物理的な変化がなく,環境の変化に伴う姿勢動揺の変化が転倒に関与していたことは非常に興味深く,今後の転倒予防に重要な情報である.
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