Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
トーマス・マンの『トニオ・クレエゲル』―病跡学的な作品の系譜
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.786
発行日 2000年8月10日
Published Date 2000/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109299
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『トニオ・クレエゲル』(実吉捷郎訳,岩波文庫)は1903年,トーマス・マンが28歳の時に発表した作品であるが,そこには,創造的な営みと病気との関係を強調する病跡学的な認識が示されている.
トニオは自分でも,「どうして僕は一体こんなに風変りで,みんなと反が合わないんだろう」と訝るように,「いつも孤独で,尋常一般の境から閉め出されている」少年だった.彼は,周囲の子供たちを,善良で手堅く平凡な生徒と見なしていて,彼らにある種の憧れさえ感じているのだが,それに引き換え,「自分には,あらゆる点で,否でも応でも変った所がある」と思うのだった.
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