脳血管障害 True or False
伸張を続ければ痙縮は改善する?
長谷 公隆
1
1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
pp.781-784
発行日 2000年8月10日
Published Date 2000/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109298
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はじめに
痙縮(spasticity)は,「腱反射亢進に伴う筋緊張の速度依存性の増大」1)と定義されており,筋の他動的伸張により誘発される反射に基づいた抵抗の増大としてとらえることができる.伸張に対する過剰な痙縮筋の活動は,円滑な関節運動を妨げるだけでなく,拮抗筋の随意性を低下させる(Ia抑制)2).それは大脳から脊髄に至る中枢神経障害によって生じ,時間経過によってさまざまな修飾を受ける.
特に脳卒中片麻痺患者においては運動麻痺が併存し,痙縮は,その回復過程のなかで顕在化してくることから,筋緊張の抑制と麻痺筋の促通というリハビリテーションアプローチによって大きく影響を受けるものと考えられる.脳卒中片麻痺患者に対する運動療法のなかでの筋の伸張は,関節可動域を維持・拡大するとともに,筋緊張を抑制して相反性神経支配に基づいた随意性を誘導することを目的にしばしば用いられる手技である.
図1は,伸張反射回路を中心にした痙縮の発現機序をまとめたものである2).痙縮を抑制するためには,これらの原因にアプローチすることが必要であり,また,その効果判定には,“伸張反射の軽減”とそれに伴う“筋緊張の低下”の両者が,同時に証明されなければならない.一方,健常者では,関節の他動運動によって伸張反射を誘発することは困難であり,前者の評価にはH反射が用いられている3).H反射は,Ia求心線維からの脊髄反射回路を直接的に評価することができるため,筋の伸張が反射活動に与える影響に関しても,肢位の変化等を考慮して測定されれば最も有用な方法といえる.
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