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特集 障害学Update
対応
障害への適応―運動制御と運動技能獲得
Adaptation Procedures to Disabilities: Motor Control and Motor Skill Acquisition.
大橋 正洋
1
Masahiro Ohashi
1
1神奈川リハビリテーション病院リハビリテーション医学科
1Department of Rehabilitation Medicine, Kanagawa Rehabilitation Hospital
キーワード:
障害適応
,
運動学習
,
運動制御
Keyword:
障害適応
,
運動学習
,
運動制御
pp.969-974
発行日 1996年10月10日
Published Date 1996/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108215
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はじめに
地球上の生物は,それぞれの生存環境に適応するように進化した.しかし,環境に合うように身体の形態や機能を特殊化させることが必要であった.ところが人間は,身体を特殊化させることなく,地球上のあらゆる環境に適応してきた.人間が採用した手段は,さまざまな道具を作り,人間に合わせて環境を作り直し,さらに行動様式を変更することであった.この適応能力は,高度な認知機能の産物であって,融通性が高く,少々の環境変化にも対応することができた.
人間はこの優れた適応能力を,外的環境の変化に対してだけでなく,病気や疾病によって身体機能に変更が加えられた場合にも発揮してきた.例えば,両上肢切断者は能動義手のフックを巧みに操ってネクタイを結び,聴覚障害者は手話によって会話を楽しみ,脊髄損傷者は車いすを自在に操ってスポーツ技能を高めることができる.
これらの事例を考えると,リハビリテーションとは,障害者が変更された形態や機能をもって,家庭や社会へ再適応することであろう.この過程においては,障害受容を心理的に押し進めるだけでは不十分で,身体的および社会的課題をそれぞれ解決することが必要である.例えば残存機能の強化,日常生活や社会的役割を果たすための知識と技能の獲得,環境に合った行動の選択と実行能力の獲得,これらはすべて障害への適応に必要な事柄である(表1).
本稿では障害適応に関する幅広いテーマのなかから,身体的適応を促進させるための運動制御motor controlや運動技能獲得motor skill acquisitionに関する最近の知見を総説する.
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