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はじめに
小児の日常生活活動(ADL)に関しては,これまでにもいくつかの報告が行われてきた1-6),姫野ら1)は,重度脳性麻痺の治療目標はADLの自立にあり,患児の重症度の把握,治療方針の決定,予後の予測等においてADL評価は最も重要な判断材料であると述べ,統計学的手法を用いて,各評価項目への配点および評価尺度の割り付けを行った独自のADL評価表を考案したが,対象は重度脳性麻痺に限られていた.その他のADLに関する報告は,評価尺度を自立,半介助,全介助のように大まかにしか分けていないものがほとんどであり,これまで疾患を問わずADL項目ごとの自立度や介護度を測定できる普遍的な評価法は存在しなかった.
一方,小児領域では,発達検査法がスクリーニング,診断,施設間情報交換などの手段として利用され,一部ADLに関連した項目が含まれていることもあって,ADL評価の代用として用いられることがしばしば見受けられた.長谷川ら3)は,小児のADLを評価するためには小児の発達診断を考慮しなければならないと述べ,発達指標の通過という視点から健常児のADLの年齢的推移を検討した.一方,Feldmanら7)は,機能評価(functional assessment)に発達指標スケールを使用する際の問題点として,項目のサンプリングが機能評価には不適当であること,障害児への標準化が不足していること,さらに機能的変化に対する感受性が欠如していることを指摘し,標準化された機能評価法の必要性を強調した.
このようななかで,6か月から7歳までの小児のADL評価法として“こどものための機能的自立度評価法”(Functional Independence Measure for Children;以下,WeeFIM註)と略)が開発された.WeeFIMは,成人のFIMS8,9)と同様に,一般ADL13項目と心理社会ADL5項目の計18項目から構成され,その評価尺度は主介護者による介助の度合に応じて7段階に分かれている(表1).総得点は最低18点から最高126点の間に入る.米国では,その信頼性や妥当性に関する検討や,健常児417例による横断的データの収集が行われ,標準化に向けての研究10-17)が進められている.そのなかで,Msallら15)は,WeeFIMの総得点は60か月まで月齢とともに増加し,84か月までにはほぼ満点に到達すると報告している.わが国でも当科が中心となって,WeeFIMの検者間信頼性や年齢的推移などに関する予備的研究を行ってきた18-23).
今回,われわれは,(1)WeeFIM総得点と津守式乳幼児精神発達検査法(以下,津守式と略)および遠城寺式乳幼児分析的発達検査法(以下,遠城寺式と略)により求めた発達年齢との関係,(2)津守式の下位項目の通過状況とWeeFIM項目別得点との関係,の2点に着目しながら,WeeFIMと既存の発達検査法との詳細な比較を行い,ADL評価法としての本法の有用性について検討した.
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