Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
モームの生涯受容(第3報)―痴呆性老人としてのモーム
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.180
発行日 1997年2月10日
Published Date 1997/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108314
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前2回のモーム論では,70歳頃まで自らの生涯を肯定的に捉えていたらしいモームが,最晩年には自分の人生を否定するような言葉を吐いていること,そしてその背景には,重度の痴呆があったと推測されることを述べた.だが,痴呆性老人が全て自分の人生を否定するわけではないし,まして,当時のモームは,地中海を臨む南仏の広大な別荘で,計り知れない価値を有する家具や絵画に囲まれ,巨額な印税と毎週300通以上のファンレターが世界中から舞い込むという生活を送っていたのである.
なぜ,モームは幸福な痴呆性老人として人生を終えることができなかったのだろうか?
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