巻頭言
リハビリテーション医の夢
前島 伸一郎
1
1和歌山県立医科大学
pp.697
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108163
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巷ではリハビリテーション科は超マイナーな科と言われている.某科の医局員は「リハビリテーションを担当しろ!」と教授に言われ,不本意であると落ち込んだ.自信を持って「俺はリハビリテーション医だ!」と言えない専門医もいるらしい.冗談じゃない.そういう人にリハビリテーションを担当して欲しくないし,専門医資格を取ってもらいたくない.いくら説明しても,リハビリテーションの魅力など到底分かってもらえないだろうし,negative思考の人が障害をもつ患者をpositiveにできるわけがない.
ようやくリハビリテーション科が標榜診療科として認められようとしている.しかし,リハビリテーション医として十分に満足した気持ちで仕事をしている専門医はそれほど多くはない.私自身,誰よりも「リハビリテーション医」であるということにある種の“こだわり”を持ちながら日々の臨床を行ってきた.リハビリテーション科のなかにいる場合,こんな面倒な“こだわり”は要らないが,リハビリテーション科のないところでリハビリテーション医としてのアイデンティティを保ち続けることは大変疲れる.私が医師として育った環境もリハビリテーション科ではなく,また周囲にリハビリテーション医はいなかった.生死の境をさまよう脳神経外科の患者を診ながら,救命だけが全てではなく,患者とその家族を含めて幸せにすることが医師の務めであると指導医より言われたが,後にリハビリテーション・マインドを教えていただいたのだということに気付いた.
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