医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの
障害の受容,死の受容
広井 良典
1
1社会保険大学校
pp.1178-1182
発行日 1995年12月1日
Published Date 1995/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901686
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本連載では,1年間にわたり,ヒト遺伝子研究のもつさまざまな意味について議論してきた.最後に,私たちがここまで遺伝子をめぐる多様な問題について述べてきたことの全体を受けとめていく場合の基本的な哲学について考えてみたい.
すでにみたように,高齢化の急速な進展や慢性疾患への疾病構造の変化を背景として,現代の医療においては,看護や介護など「ケア」的な部分の比重や重要性がきわめて大きくなっており,これに関連する動きとして,過度の専門分化の見直し,在宅ケアの拡大,末期医療における緩和ケアといった方向が新しい形で追求されている.一方,医療技術そのものについては,メディカル・エレクトロニクスのさらなる展開や,近年における生命科学の飛躍的展開を基盤として,技術革新がさらに加速しているという状況がある.すなわち,こうして「ケアの比重の増大」と「医療技術のいっそうの高度化」という,一見異質なベクトルがく同時進行〉しているのが,現代の医療の特徴である.これは言い換えれば,先にふれた「生活モデル」と「医療モデル」それぞれの新しい展開と拮抗である.こうした状況の全体を,私たちはどのような視点で捉えていけばよいのだろうか.
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