Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』—グルーシェニカの多重人格的な特性
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.212
発行日 2026年2月10日
Published Date 2026/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220540020212
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1880年に完成したドストエフスキー(1821〜1881年)の『カラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫訳,光文社)には,グルーシェニカという境界型パーソナリティ障害を思わせる女性が描かれていることは他誌1)にて示したとおりだが,グルーシェニカには多重人格を思わせる特徴もある.
例えばグルーシェニカは22歳という年齢ながら,世間では「ひどい利率で貸しつけては金を貯め込んでいる,情け容赦もない古だぬきのペテン師」と噂されていて,カラマーゾフ家の次男イワンも「あの女,ケダモノだよ」と酷評する.グルーシェニカは,カラマーゾフ家の父親フョードルと長男ドミートリーを魅惑・翻弄し,二人を対立させて面白がるような女でもあったのだが,そのフョードルでさえ「あれは気の多い女だからな」,「あれは嘘つきで,恥知らずな女なんだ」と非難するような女性だったのである.
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