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はじめに
障害児者では摂食・嚥下機能に障害が現れることが稀ではなく,重度の障害児では食事の問題が療育の大きな問題の一つとなる.摂食・嚥下機能障害の問題点は誤嚥にある.脳卒中の後遺症などによる成人や老人にみられる誤嚥を起こすような患者では,咽頭の機能異常だけでなく,口腔機能の異常が大きく関係していることがいわれている1,2),口腔機能の発達遅滞や発達停止を伴う障害児者にみられる摂食・嚥下機能障害では,口腔機能に何らかの異常が見られることが普通である.そこで,摂食・嚥下に関係する口腔諸器官の感覚や運動機能を的確に診断し,それをリハビリテーション治療に結びつけていくことが必要不可欠となる.また,この場合の診断は,単に症状としての異常を捉えるだけでなく,発達的な位置づけも考慮したものでなければならない.なぜならば,摂食・嚥下に関係する口腔の運動機能は生後に発達,獲得されるものであり,障害児者ではこの発達の遅滞,停止が主原因となって摂食・嚥下機能の異常を来しているからである3).
従来,口腔顔面領域の診断,評価は,疾病を中心とした形態学的なものが主であり,摂食・嚥下機能に関連するような感覚や運動機能の診断評価はほとんどなされてこなかった.このような背景の中で,アメリカのNIHでは1987年に,このような口腔顔面領域の感覚や運動の機能を診断,評価分析する一方法を発表している4).しかし,これとても脳卒中の後遺症など,成人を対象としたものであり,発達の問題を抱えた障害児者の診断,評価には適していない.いずれにしても,さらに客観性の高い評価法の開発が必要なのが現状である.
このような状況を踏まえ,本稿では筆者らが開発,改良を重ねながら使ってきた発達診断的観点も織り込まれている観察評価法を主として紹介することとする.
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