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はじめに
癌の集学的医療の進歩により癌患者の生命的な予後の向上が認められている.その一方で,癌そのものの重篤な病状,集学的医療および長期臥床による廃用症候群により,重症ハイリスク疾患の状態となり,全身体力消耗状態1,2)などの重大な機能障害を引き起こす.そのため,癌患者は医学的リハビリテーションの重要な対象になってきた.Hirsh Dら3)は,癌患者の機能障害として全身体力低下(General weakness)をあげ,これには腫瘍による局在症状(Mechanical effects;Primary tumor or metastasis),腫瘍の遠隔症状(Remote effects;Paraneoplastic syndrome),治療の影響(Chemotherapy,Radiation,Surgery),栄養不良,廃用性障害(Complication of immobilization),心理障害などの多くの因子が関与していると述べている.しかしながら,実際の癌患者の医学的リハビリテーションでは,全身体力低下,廃用性障害,および体力消耗状態を適切に鑑別することは困難であることが多い.
本論文では癌患者の廃用性機能障害を,deconditioning,廃用症候群および全身体力消耗状態として分類した.全身体力消耗状態を含めた理由は,「廃用症候群が加わって,全身の体力を更に低下させている1)」と定義されているからである.deconditioningは,「長期にわたる不動によって起こる身体的,心理的な悪化の過程4)」の中で,体力の低下,耐性低下,および身体的・心理的な易疲労を伴っている状態とした.廃用症候群は,長期の不動によって拘縮,筋力低下,筋萎縮,褥瘡のいずれかを起こしている状態とした.全身体力消耗状態は上田1),大川2)らの「重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態」の定義にしたがった.これらの定義に基づいて,横浜市大医学部附属浦舟病院リハビリテーション科における癌患者の廃用性機能障害と医学的リハビリテーションの初期目標設定およびリハビリテーション・プログラムについて検討した.
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