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はじめに
廃用症候群はリハビリテーション医学における極めて基本的な概念であり,症候群として互いに関連しあっている種々の症状の中で廃用性筋萎縮・筋力低下は,運動機能上重要な機能障害(impairment)である.そのためにリハビリテーション医学においても早期から臨床上の課題としてとらえられてきている.しかし現在,廃用症候群の重要性と,その予防,治療における具体的アプローチについて反省すべき点が指摘されており,廃用性筋萎縮・筋力低下についても反省や再考すべき点が少なくない.なお,廃用症候群全般の再考が必要となったことの背景としては,リハビリテーション医療の対象の拡大1~4)や,具体的リハビリテーション・アプローチの緻密化5~7)などのリハビリテーション医学の発展,進歩により顕在化した面も大きい.そのような流れの中で,我々も廃用症候群について検討をすすめてきており,その中で明らかになってきた廃用性筋萎縮・筋力低下に関する問題のうち,現在およびこれからのリハビリテーション・アプローチにおいて重視すべき次の3点に重点をおいて述べたい.
まず第1に,廃用性筋萎縮はある一定の筋の固定によって生じる,いわば局所的要因による場合と,特に筋固定をすることなく全身的な活動性が低下することによる場合とに大別されるが,現在,重視すべきは後者である.すなわち,廃用性筋萎縮を,それだけが単独に存在する症状としてではなく,全体的な廃用症候群の部分症状としてとらえることが必要である.そのため,本稿では後者について主に述べることとしたい.第2に,廃用症候群の多くの症状のうち,廃用性筋萎縮は,特に何らかの障害を契機として生じた場合は単に元の状態に戻すだけではなく,他の機能障害をカバーするために元の状態以上の機能向上を図るべき場合が多いことである.第3は,廃用性筋萎縮を,特に障害のない健常筋肉における場合だけではなく,中枢性・末梢性神経麻痺や筋病変による障害筋肉における廃用性因子についても考慮すべきではないかという問題点である.
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