巻頭言
リハビリテーションの名のもとに
伊勢 眞樹
1
1川崎医科大学リハビリテーション科
pp.541
発行日 1994年7月10日
Published Date 1994/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107642
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65歳で頸髄損傷不全四肢麻痺の患者さん.「先生に出会えてよかった.リハビリテーションしてもらってよかったです.1週間でこんなに良くしてもらって,なんでもできるようです.」受傷後2年を経過し,四肢の関節拘縮が強く残存機能が発揮できていなかった人である.はたして良くしたのだろうか?二次障害は予防すべきもので,“リハビリテーションの名のもとに”それのみを改善させたことがわれわれの本来の仕事だったのだろうか?
83歳で大腿骨頸部骨折の患者さん.「リハビリテーションするとええと言われて来たのに!近所の人は,5,6年もリハビリテーションすりゃ良くなると言うのに先生はせんでもええと言われる.こんな腹のたつことはありゃあせん.」骨折から1年半経過,家庭内では独歩している人である.少なくとも歩行訓練を行う段階は終了している.漫然と“リハビリテーションの名のもとに”運動療法を続けることは,リハビリテーション(運動療法)を行うことそれ自体が患者の家庭への復帰または社会復帰の阻害因子ではないのか?
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