Japanese
English
増大特集 老年者とリハビリテーション
Ⅲ.リハビリテーション医学
脊髄損傷
Spinal Cord Injury in the Elderly.
井手 睦
1
,
緒方 甫
2
Makoto Ide
1
,
Hajime Ogata
2
1吉備高原医療リハビリテーションセンター
2産業医科大学リハビリテーション医学
1Kibikogen Rehabilitation Center for Employment Injuries
2Department of Rehabilitation Medicine, University of Occupational and Environmental Health
キーワード:
脊髄損傷
,
老人
Keyword:
脊髄損傷
,
老人
pp.379-383
発行日 1991年4月10日
Published Date 1991/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106787
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はじめに
今日のリハビリテーション医療において脊髄損傷の占める比重は大きく,多大な人力と財力が費やされている.
全国の38労災病院を平成元年度に退院した脊髄損傷患者数は381人,その平均年齢は44.6歳であった(昭和59年度は37施設でそれぞれ524人,44.5歳).脊髄損傷は急性期から慢性期にわたる包括的なケアを必要とし,医療チームの要であるリハビリテーション医はその疾病構造に精通していなくてはならない.
国内外の先人達の努力によって急性期の管理や合併症の予防などについては長年にわたって検討が続けられてきたが,高齢化社会の到来に伴って表面化してきたのが脊髄損傷患者の高齢化である.高齢の脊髄損傷患者は“青壮年期受傷の慢性期例”と“高齢になっての受傷例”に二分される.前者は施設の充実などのハードと知識の浸透というソフトの向上によって患者の生命予後が改善したために生じたもので,尿路系をはじめとした臓器の加齢に伴う変化を再検討することが要求されている.後者は現代の高齢化社会のもたらした新たな局面であり,青壮年層が主たる対象であった従来の脊髄損傷管理の概念をそのまま持ち込むのは好ましくないと思われる.
本稿では高齢になっての受傷例(以下,高齢受傷脊損)を対象とし,諸氏の報告に筆者らの経験を混じえながら,そのリハビリテーションの概要を述べる.なお,ここで扱う“高齢”は一般に言われるように60~65歳以上とする.
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