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はじめに
リハビリテーション医学の課題の一つに,Krusen1)の“Rehabilitation medicine should add life to the years as well as years to life”の言葉で示されるように,生き永らえた歳月にいかなる生命・生活を具体的に実現していくかというテーマがある.老人ではただ単なる延命よりも,生活の質(quality of life,QOL)がより重要である2).
人体の重要臓器の機能は加齢とともに生理的老化に伴って緩やかに下降し,80歳代では30歳代のほぼ2分の1になることが示されている3).この生理的老化に対して,病人では疾病の結果起こる病的老化の二重構造で捉えられねばならない.また,病気・障害のため非活発な生活は老化を助長する悪循環を形成しやすい.入院中の脳卒中患者の生活時間調査では睡眠,身辺処理,休養・ぼんやりが増え,労働,余暇などの社会的生活時間が減少し4),運動障害を伴う脳卒中,SMON,慢性関節リウマチ,脊髄損傷などの慢性疾患患者の在宅での日常生活活動頻度も減少している5).このように病人は日常生活活動の面でも,同年代の健常者に比してより高齢者の様相を示すことが知られており,早期老化として捉えることができる.これに対応する考え方は障害予防が原則である.機能障害,能力低下,社会的不利の各々が下降するのを防ぐと同時に,機能障害が能力低下に,能力低下が社会的不利に陥るのを防ぐことである.高齢者の主要な予防目標は①無益な能力低下を防ぐ,②社会的問題や身体的症候による生活の質の低下を防ぐ,③家族・縁者関係の崩壊を防ぐ,④できるだけ長く各人の家庭におく2),ことである.
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