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はじめに
脊髄損傷は受傷後に麻痺を残し,その後の社会参加に問題を生じる.脊髄損傷者の年間発生率は,人口百万当たり40.2人と推計されている1,2).身体障害者・障害児実態調査によると,対麻痺者・四肢麻痺者(児)を合わせた在宅脊髄損傷者数は,1991年に66,800人,1996年に77,300人と推計されており,5年間で1万人以上と急速に増加している3).
このような増加の原因には,脊髄損傷者の生命予後の改善が寄与している.医療の進歩のもと,脊髄損傷者の生命予後の改善は国内外で報告されている4-6).脊髄損傷者に対して,急性期の治療にとどまらず,その後の慢性期をいかに生きるかという生活の質(Quality of Life;QOL)の観点から,諸問題や困難を明らかにし,支援策を検討することが重要な課題となっている.
1980年,WHOは,従来より用いられていた国際疾病分類(ICD)に対して,障害の分類とコード化を目的とした国際障害分類(International Classification of Impairments,Disabilities,and Handicaps 1980年版;ICIDH-1)7)を公表した.これは障害を3つの次元,すなわち機能障害,能力低下,社会的不利から説明したものである.ICIDH-1は,援助実践や統計調査,政策・行政などの分野で,すでに幅広く活用されている8).
障害者施策の基本的理念として,障害者は保護されるべき対象として捉えられるのでなく,個人の尊厳にふさわしいサービスを保障される権利を有すると同時に,社会の構成員としての役割を果たし,社会に貢献することが求められている.しかし,実際には,さまざまな障壁が,その社会参加の実現を阻んでいる.
本研究では,脊髄損傷者のQOLのうち,特に社会参加に注目して,ICIDH-1の社会的不利の項目を用いて社会参加の実態把握を試みたので,これを報告する.
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