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脳卒中患者の復職の現状
脳血管障害患者の予後については年齢の影響が大きく,70歳台までは予後良好者が80%近くを占めているが,70歳台以降は死亡例を含め予後不良例の割合が急増する.峰松ら1)は,発症前に自立していた急性期脳血管障害患者7,658例(くも膜下出血除く)の前向き調査を行っているが,このうち20〜64歳の就労年代にあたる症例は890例あり,これらの予後をみたところ,約75%の症例が発症3か月後の時点ですでに日常生活動作(activities of daily living;ADL)自立し,自宅で生活していることが明らかとなった.しかしながら,佐伯ら2)が1990年以降の70編の脳卒中後の復職に関する世界の医学論文を概観したところ,発症前有職の8,810人の復職率は平均44%(日本は33%)であったと報告している.さらに就労年代脳卒中患者の復職を成功に至らせる要因として,① 復職的な方向性をもったリハビリテーションの提供,② 雇用主の柔軟性,③ 社会保障,④ 家族や介護者からのサポートを挙げている一方で,提供すべきリハビリテーションサービスの内容もほとんど知られていないという医療分野における復職支援の希薄さを述べている.
労働者健康福祉機構が2004年から実施した労災疾病等13分野研究の「職場復帰のためのリハビリテーション」分野で,464例の脳卒中リハビリテーション患者について発症直後から1年半後までの追跡調査を行った結果,原職復帰に限ると42%が,配置転換と退職後新規就労を含めると51%が復職していた3).その復職時期については発症3〜6か月後(早期群)と1年半後(遅延群)の2峰性のピークがみられたが,早期復職群では,① 発症時よりADL能力が高い,② 易疲労性がない,③ 医療機関の復職支援があった,という3項目で有意差を認めた4).
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