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はじめに
神経・筋疾患のリハビリテーションは,脳卒中,脊髄損傷,脳性麻痺などのリハビリテーションにおける主要障害(major disabilities)と比べ,その歴史はまだ浅く,内容的にも今後の研究に待たれることが非常に多い分野である.
なぜならば,これまでは実際に経験する神経・筋疾患の種類・患者数が限られているリハビリテーション施設が少なくなかった.また患者の絶対数自体が少ない神経・筋疾患も多い.そのため個々の症例に対し種々の試みはなされてきたが,研究業績は少なく,リハビリテーション医学として十分に体系化がなされているのはデュシャンヌ型進行性筋ジストロフィー症や福山型先天性筋ジストロフィー症などに限られているのが現状である.しかしながら,リハビリテーションが単なる後療法的なものではなく,急性期疾患や進行性疾患にも適応があり,効果的であるということが普及しつつあり,また都市部の一般病院におけるリハビリテーション施設が充実しつつある昨今,リハビリテーションにおける神経・筋疾患患者の占める割合は今後増加し,その重要性は高まると予測される.
ではこの神経・筋疾患の教育カリキュラムであるが,なにせ対象疾患は極めて多種多様であり,また現状では豊富な経験の蓄積を持つ施設は少なく,一方経験を補うに足る文献も少ないため,一概に規定・作製することは困難と思われる.そこで本論文では神経・筋疾患のリハビリテーションに際して留意すべきポイントを述べ,参考となる文献をあげることで責めを果たさせていただきたい.なおいうまでもないことながら実際に患者を診察し,リハビリテーションアプローチを行う経験は不可欠である.経験する機会が少ない場合は,症例・経験の豊富な施設で研修や見学を行うことが当然のことながら勧められている.また施設以外においても,小児患者は養護学校やサマーキャンプ等,成人患者,特に高齢者や重症患者は福祉工場等の保護職場や地域の訓練会などで診療できる機会が少なくない.またそのような場所では病院での経験とは異なる幅広い経験ができることが多く,病院内で十分な研修ができる場合においても,神経・筋疾患以外の研修の意味も含めて,そのような場での診療経験をもつことをぜひお勧めしたい.
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