巻頭言
リハビリテーション医学教育の充実に向けて
田中 信行
1
1鹿児島大学医学部霧島分院
pp.981
発行日 1987年11月10日
Published Date 1987/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106661
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高齢化社会における脳,心肺,骨関節系の障害は年齢が最大の危険因子であり(加齢性疾患Age Related Diseaseの名を提唱),いかなる予防も発症を遅らせるのみで,国民の大半が「いつかは障害者」の途をたどる.この時代にリハの不在,施設収容主義は,国民一般の未来(老後)や実りある人生への懐疑を高め,ニヒルな世紀末的な人間消滅感を醸成することが最も恐れられる.
障害は疾病に連続,あるいは合併することが多く,医師のリハ医学教育(卒前,卒後,生涯)の重要性は誰しも認めるところである.しかし現実には医師のリハ知識の不足による,拘縮,変形,廃用症候群,心理的抑うつや退行,社会・経済的脱落は枚挙に暇がない.それは本人,家族,社会を大きく悩ませるとともに,多くのリハ担当者にも実効のあがり難い,無用の苦労をかけている.しかし敢えて医師のために弁明すれば,それはリハの意義を教えるリハ医学教育の不在によるもので,医師だけの責任ではない.研究から教育,そして医療に到るという階層性はリハ医療についても必須の条件であり,単に倫理感,人間愛という言葉で解決出来る問題ではない.
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