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はじめに―処方のあり方について
リハビリテーションにおける処方については他の論文1)に論じたので詳しくはそれに譲るが,いくつかの基本的な点については再確認をしておきたい.
一つは処方として最も重要なのはリハビリテーション・チーム全体に共通な基本方針を明確に打ち出すことであって,義肢・装具・車椅子のように当然細部まで詳しく処方すべきものは別として,個々の職種のプログラムをどこまで詳しく処方するかは,基本方針を具体的なプログラムにどれだけ具体化(いわば「翻訳」)できるかというスタッフ側の力量にかかっているということである.長年のチームワークによって鍛えられ,基本方針の理解やゴール(主目標と副目標1))を実現するためのプログラムの組み方についての理解に食い違いのないチームであれば,方針と目標(もちろん,いずれもかなり詳しいが)さえ示せばそれで十分で,細部については各職種の裁量に任せてよい.しかし,そうでない場合にはその程度に応じて詳しい具体的処方が必要になってくるということである.
第2には,処方は必ずしも理学療法士(PT),作業療法士(OT)など,リハビリテーション・チームのメンバーに対するもの,あるいは義肢・装具・車椅子・杖類・歩行器などの補助具の処方だけではないということである.患者本人と家族に対して,病棟での生活のしかた(昼間は横にならない,どの範囲まで歩いてよい,あるいは毎日何千歩まで歩くように,など),自己訓練2)の内容と回数(少量頻回の原則2)に立って)などを具体的に指示することが極めて重要であるが,これは患者・家族に対する処方にほかならない.現に最近,東京大学リハビリテーション部では先に紹介した処方箋1~31)に加えて「処方箋4」をつくり,医師が患者・家族に指示した内容を記載することにしている.これは患者・家族がどのような指示・指導を受けているのかをリハビリテーション・チームのメンバー全員が知っている必要があるからである.このような患者・家族への処方が,患者の状態やリハビリテーション目標の達成の程度によって変化していくのは当然で,頻繁に追加し書き直していくことはセラピストへの処方の場合と同様である.このような患者・家族に対する処方・指導は在宅(外来)患者については特に極めて重要である.
第3に,処方は担当のセラピストだけが知っていればよいものではなく,よきチームワークのためにチーム全体が知っている必要があるということである.
以上のような考え方に立って,以下の症例についても基本方針に重点をおき,また患者・家族に対する処方をも含めて述べていくことにする.
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