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はじめに
Little氏病以来すでに百年以上にわたり,多くの先人達の努力の中で扱われてきた脳性麻痺(CP)が,当初の「姿勢と運動の異常」の見方から,その背景をなす神経生理学的機構の感覚―運動系の障害という踏み込んだ最近の見方まで,その考え方にはいくつかの変遷があった.このためCPの診断も,その時代にCPをどう考えたかにより特徴があり,それは現在の見方と必ずしも一致しない点があることは当然といえよう.
しかしLittle自身の考え方の中に,CPの病態像は新生児期からの発展の結果という思考がみられ1),早期からの治療の重要性についてすでに言及していたことは,以後一世紀以上にわたりCPの早期診断の問題を投げかけてきたことになる.そして最近のCP早期発見の考え方は,CPの早期診断ではなく,将来CPになるかもしれない病的要素を有する乳児を早く見つけようという方向である.すなわち,ある一人のCP児の生直後からの記録をたどってみると,生後4カ月頃まではその病的要素が不明確で,6カ月以後になりはじめて診断が可能となる場合がめずらしくない2~4)ことはよく知られている.このためCPの診断にこだわらずに,新生児や乳児の有する周産期異常や正常発達から逸脱している徴候を早く見つけ出し,治療の場を与えようとするのがCP早期治療のための早期発見・診断であり,このこと自体は時代の要請ともいえる.
しかしこのことは,従来のCPの定義について再論議を生じ,同時に,科学的因果関係の探求を一挙に越して「CPを治癒させた」とか「CP発達を阻止した」というような主張を一部に生み出す結果となり,CP診断の科学的意義をあいまいにさせてしまったことも事実である.このような経過を再確認しながら「CPの早期診断」の意味を吟味する必要があろう.
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