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はじめに
脳性麻痺の診断において,軽度の脳障害を新生児期から生後数ヵ月までの時期に診断することは困難だといわれているが,脳性麻痺を発達障害という観点からとらえ,経時的な多角的発達評価を行えば,発達障害の診断は比較的早期に可能である.中度ないし重度脳障害の診断は新生児期に十分な症状チェックが経時的になされれば,それらの症状経過より発達障害の予後診断はある程度可能であり,遅くとも生後3ヵ月には発達障害の診断は下されうる.
運動発達の背景には原始反射,立ち直り反応,パラシュート反応,平衡反応等の反射,反応の発達があり,随意性の発達と相俟って,それらの発達程度に応じて,姿勢保持およびmotor behaviourの漸進的発達がcranio-caudal方向に完成してゆく.
はじめに新生児期から生後4ヵ月未満までの発達評価方法について述べ,つづいてMilaniのチャートに準じて立ち直り反応,パラシュート反応,平衡反応の評価方法,異常運動パターンおよび異常姿勢反応,診断の具体例の順に述べる.
脳性麻痺の診断にあたって,特に留意しておかなければならないことは,たとえ運動発達障害児といえども,発達過程にあるということである.したがって,軽度の発達障害児のなかには,適切な理学療法により正常発達を遂げるものが存在する一方,放置した場合,軽度の運動障害を残すいわば正常発達と異常発達との境界域にあるものが存在するように思われ,対麻痺型において,ときおり遭遇する.
軽症例であればあるほど,脳性麻痺の明確な診断基準をもうけることは困難であり,発達障害の程度により,Risiko-baby(at risk baby)として早期より治療を開始することが肝要である.
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