Japanese
English
特集 脳性麻痺の治療とその限界
脳性麻痺早期診断の問題点―特に新生児期からの診断と治療
Early Diagnosis of Cerebral Palsy: Especially about Diagnosis and Treatment during the First 4 Months of Life.
穐山 富太郎
1
,
藤田 雅章
1
,
川口 幸義
2
Tomitaro Akiyama
1
,
Masaaki Fujita
1
,
Yukiyoshi Kawaguchi
2
1長崎大学整形外科
2長崎県立整肢療育園
1Department of Orthopaedic Surgery, Nagasaki University School of Medicine.
2Nagasaki Crippled Clildren's Hospital, Isahaya, Nagasaki.
キーワード:
脳性麻痺
,
早期診断
,
原始反射
,
姿勢反射
,
自律運動
Keyword:
脳性麻痺
,
早期診断
,
原始反射
,
姿勢反射
,
自律運動
pp.5-17
発行日 1976年1月10日
Published Date 1976/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103457
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はじめに
早期治療(遅くとも4ヵ月未満)をめざして,新生児検診,保健所検診を中心としたRisiko-babyのチェックを開始して5年になるが,生後1カ月前後からの治療開始例がやっと2例に達した頃,友人の紹介でSeybold女史に出会い,脳傷害児においては,保育器に入っている時期より理学療法的配慮がはらわれなければならないという言葉にはっとさせられたものである.
脳性麻痺の治療において,異常姿勢緊張が明確となる6ヵ月以後に治療を開始するよりも,四肢の自発運動が原始反射の影響下にある新生児期より,同じ治療概念に基づいて,運動発達の促進をはかることが,個々の脳性麻痺児の運動発達を最大限にひき上げるのにもっとも重要なことであることは自明のことである.
系統発生学的に,生来,立って歩くことを授けられた人間の赤ちゃんにとって,生後よりの発達は仕事であると同時に使命である.新生児期より1歳までの重要な発達時期を失することは,脳性麻痺児にとって,とり返しのつかない重大なことである.この特集のテーマとして,「脳性麻痺の治療とその限界」がかかげられているが,個々の症例における運動および知的発達の限界は治療のやり方とそれが開始された時期により決定づけられるものであり,新生時期からの適切な治療なくしては,その理想的な限界は論ぜられないことを蛇足ながらつけ加えておきたい.たとえば,1歳半以後ではじめて確定診断を下されるような軽症例は早期からの診断治療により正常化される可能性を有している.ここに早期診断の重要性のゆえんが存在する.
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