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はじめに
痛みは原始的な感覚であると共に,生物が生存するために必要な警告,防衛反応であり,解剖学的な単純な知覚としてでなく,患者自身の教養,経済,環境など,その他多くの因子によって修飾された複雑な感覚でもある.
痛みの考え方としては,痛みの固有求心伝導系があり,中枢の固有の場で認知されるというspecificity theoryと固有求心伝導路は存在せず,中枢系に至るインパルスのpatternによっておこるというpattern theoryがある.また,MelzackとWall1)が提唱したgate control theoryは,痛みの現象をとらえ治療に応用する立場からは,理解しやすい考え方である.
痛みには末梢性,中枢性,心因性に分ける事が出来,中枢性の痛みとして視床症候群,Wallenberg syndromeがあり,中枢性の自律神経系障害によると考えられる肩-手症候群などがある.心因性の痛みとは,明らかな病変が認められないか,あってもわずかな病変で,頑固な痛みを訴え続けるもので,chronic pain syndromeとも呼ばれている.
今日で痛みの伝導路は上行性だけでなく,中枢(脳幹)からの下行性の制御回路,麻痺性鎮痛薬のレセプター,内因性モルフィン様物質などの存在が明らかにされ,以上の様な神経生理学,薬理学の成果にもかかわらず,痛みの本態は解明されていない.また,痛みは日常リハビリテーション(以下リハと略す)の診療,治療に良く遭遇する問題であり,痛みがリハの大きな阻害因子となる.
痛みのために患者の訓練意欲が低下し,リハ訓練を拒否したりする事もよくあり,痛みが必要以上に過度に長期にわたる場合疼痛反応として精神,心理的な問題をおこす事も稀でない(図1).
痛みを考える上で痛みを和らげるのでなく,その原因を考え,正しく痛みを全人間的に管理する事が大事である.
今回,脳血管障害の合併症としての痛みを考える上で大事な基礎的知見と,中枢性の痛みの代表として視床症候群,肩-手症候群について述べる.
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