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はじめに
ADL評価は従来より能力低下の評価法として広く用いられてきているが,日本リハビリテーション医学会の基準化の努力にもかかわらず,それぞれの施設ごとに,まちまちのADL表を用いているのが現状であると思われる.ADLの概念自体,1900年代中頃にニューヨーク大学のリハビリテーション医学から出てきたものであり(Lawton EB,19631);今田ら,19832)),したがって研究の歴史も浅い.しかし,アメリカではすでに多くの研究がなされ,Katz Index3),Barthel Index4),KennyのSelf-Care Evaluation5)など,優れたものが作成されている.また,総合的評価としてのPULSES(MoskowitzとMcCann,19576))は,初期に発表された機能評価法であるにもかかわらず,現在でも高く評価されている.ニューヨーク大学のGrangerらは,Barthel Indexに高い評価を与え,1970年代初期にadapted Barthel Indexを発表した.それ以後Barthel Indexは特に広く使用されるようになっている.また1975年にはadapted PULSESを発表した.そして,それらをさらに発展させ,Long Range Evaluation system7)として,主として脳卒中患者の評価研究をすすめている8).我が国においても現状に即した独自の評価表を作ろうとする動きがみられているが,脳卒中の患者の評価,機能予後の予測の研究が多いようである.
最近,日本は世界でも有数の急激な社会の高齢化時代を迎え,有病老人の数も急速に増加している.したがって,今後,老人の問題はますます重要になってくると思われる.
そこで,筆者らは老人慢性疾患患者の評価およびリハビリテーションに際しての訓練の効果判定の目的でPULSES prefiie,Katz IndexおよびBarthel Indexを基盤として全体的評価を含み,かつ日本の生活様式を考慮した新たなADL評価表を作成し,点数化を試みた.さらに,その評価表を使って早期にゴールを予想できないものかと考え,まず予備的に当院におけるリハビリテーション患者100名を対象として老人の機能評価を試みた.その結果,この評価表は簡便で,かつ有用であることを確認した.そこで,さらにADL点数別に検討を加え,患者の退院先(自宅か施設か),生命予後などもあわせて調査した.その結果,ADLの自立度は退院先を決定する一つの重要な要素であることが明らかになった.
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