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成人移行支援とは
近年,医療の進歩や社会的支援体制の整備に伴い,小児期から疾患がありながら成人になる人は増えている.そのために,個々の患者にふさわしい成人期医療への移り変わりが重要な課題になっている1,2).神経系疾患については,日本神経学会において,日本小児神経学会からも委員を選定し,2020年7月11日に「小児—成人移行医療対策特別委員会」が設置され,より良い移行医療を構築するための取り組みを行っている3).なお,医療行為を実施するには,医師から患者が理解できるよう十分に説明し,患者本人の同意が必要である.すなわち,図1に示すように,幼児期には,親が意思決定の中心的役割を果たしており,児は理解力の成長に合わせて必要な説明を受け,できる範囲の判断をすることになる.そして,成人後は患者自身で意思決定することとなり,必要に応じて適切な相手と相談しながら決めることになる3).本人の意思決定能力の程度によっては,本人が理解できるように説明の方法を工夫し,本人からの意思表示を確認する,または本人の意向を推定して何が本人にとってよいことなのかを本人・家族,家族等と医療・ケアチームがともに考えるという協働意思決定(shared decision making)を行う必要がある3-5).
また,筋緊張や姿勢,運動機能,呼吸機能,摂食嚥下機能,知的機能などの障害に対処が必要な場合には,医療体制を整え,生活の援助,社会参加,そして,適切な福祉サービス利用のために,患者を支える多職種連携が重要視されている.すなわち,患者・家族とともに,小児診療科,成人診療科,臓器・疾病専門医,総合診療医,看護師,医療ソーシャルワーカー(medical social worker:MSW),心理師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,薬剤師,相談支援専門員,栄養士,保健師,介護スタッフ,学校や企業の関係者,そして行政の担当者などの多職種が連携したチームづくりが推奨されている6-8).このように,チーム形成をして成人移行支援2)を行い,協働意思決定もできる体制にすると,主たる介護者である家族,なかでも両親の高齢化への対応もしやすくなるのではないかと考えられる.
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