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はじめに
多くの在宅の脳性麻痺者は,重複障害ないし重度の障害であるために,雇用のレベルにほど遠く,また,授産の処遇すら適応にならないことが多い.そのため,以前は,成人の脳性麻痺者は,雇用の機会がないまま長期にわたって(重度)身体障害者授産施設に入所し続けていたり,社会参加の場がないまま在宅生活をよぎなくされてきた.しかしながら,近年,地域福祉サービスが整えられ,在宅の成人脳性麻痺(重複障害をふくむ)者とその家族の生活が変化してきている.その大きな契機は,養護学校義務化と国際障害者年であった.
昭和54年の養護学校義務化以後,重度の肢体不自由である脳性麻痺児などの卒後の進路の開拓が行われてきた,こうした進路は,ほとんどが社会福祉事業法の法外施設の小規模福祉作業所であり,障害者とその保護者,ボランティアの協力で作られたものである1,2).そして,肢体不自由養護学校の在籍児童生徒の障害のほとんどが脳性麻痺となり,重度・重複化するとともに,小規模福祉作業所の通所者も重度・重複障害者が加わり,その施設設備や職員(指導員)では十分な処遇を期待できない状況が生じてきている.しかし,このような状況の中で,小規模福祉作業所は成人の脳性麻痺(重複障害をふくむ)者に対して,実質的に地域福祉の重要な一部門となっている.
また,近年,自立生活運動がわが国にも定着し始めた.肢体不自由者の自立生活運動の多くは,小人数の脳性麻痺者を中心とした障害者とボランティアのグループによる任意の運動である.そして,自立生活運動を地域福祉サービスの一形態として運用していくために,自治体や福祉団体の助成を受けた試行的な実践活動が行われている3,4).
さらに,地域福祉のニードの高まりの中で,養護学校卒業後の重度・重複障害者(いわゆる重症心身障害者)を対象とした通所のディケアー施設が設立され始めている5,6).
しかし,成人の脳性麻痺(重複障害をふくむ)者への地域福祉では,福祉と教育と医学的リハビリテーションの連携は不十分である7).また,現状の社会福祉の施設体系では地域福祉のニードに十分に対応できない状況も生じてきている.そして,地域リハビリテーションの調整機能が不十分な中で,作業所づくりが先行し,自立生活運動がすすめられているのが現状と考えられる.
そこで,地域リハビリテーションの観点から,義務教育終了後の成人の脳性麻痺(重複障害ををふくむ)者に対する小規模福祉作業所を中心とした地域福祉サービスについて,事例報告とともに検討を行った.
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