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まえがき
情報科学の分野でいわれている予測の概念を整理してみると,“過去より現在までに知られているデータをもとに未来のある指定された時点の状態に関する情報をできる限り察知すること”ということができよう.そしてその目的は得られた情報をもとに問題解決のための戦略を立案することとされている.
脳卒中のリハビリテーション(以下リハと略す)においても,ある時点における患者のデータをもとに,到達する可能性のある水準を予測することは,いわゆる予後の推定として一般に行われている.中でも歩行能力の到達水準の予測に関するものは,もっとも基本的な課題とされ,歩行阻害因子というテーマで従来多くの研究が行われてきており,著者ら1)はこれらの因子の抽出に関する方法論について考察を行っている.その中で若干の指摘を加えてあるが,従来の研究は二木2)も述べているごとく予後を推定する因子の分析(analytic)な立場に終始している傾向があり,予測した結果にもとづき積極的にプログラムを設計しようとする総合的(synthetic)な立場をとろうとする研究は少ない様に見受けられる.後者の立場で行う予測では先ず予測対象を構造的にとらえることによりモデルを組み立てることが一つの方法とされており,著者ら1)の提示した臨床病型の分類は歩行の自立を予測するためのモデルの1つの例とも考えられる(表1).
今回は対象を変え,ある地域の一般病院で比較的早期よりリハを実施し得た患者につき,歩行の自立に加え,歩行スピード,歩行持続距離などの歩行能力の到達水準について分析的な検討を行った.そして得られた成績をもとに歩行能力の到達水準についての予測モデルを構成した成績を述べる.
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